大学の老朽化したトイレを、学生が構想を練り、施工まで携わりながら完成をさせました。大学構内の土を掘り、漆喰と混ぜながら、イタリア磨き、タデラクト、ハンダ、大津磨きなどの手法を用い、左官職人とともに美しい空間を創ることができました。多くの学生にとって、左官や漆喰との関わりは初めてでしたが、鏝やタデラクトを磨く石を持つ姿は楽しそうであり、とても有意義な経験を得たと多くの学生が語っていました。
女子学生の意見を取り入れて完成したトイレは、イタリア磨きに囲まれたパウダールームなど居心地のいいアメニティースペースとして大好評です。大学の建築学科で行われる授業は、座学と設計の演習にとどまりがちですが、身近な素材と伝統技術を活かすことで貴重な学びの場となることを確認できました。
照明器具やタイルのセレクト
左官 松木憲司さんからの指導
面台を「タデラクト」で仕上げます。モロッコなどにおける伝統的な左官技法です。オリーブ油石鹸水を塗りながら、石で磨くことで、耐水性・撥水性のある仕上げとなります。
「イタリア磨き」と呼ばれる壁をみんなで仕上げます。
男子トイレの正面は、大学構内で採取した土を使った「大津磨き」です。職人による高度な技がみられます。
ローカルな素材と技術を使いながら、グローバルな建築空間に想いを馳せることをコンセプトにしました。環境に配慮した社会をつくる上で、伝統に学び地域の素材と技術を活用することが求められます。併せて、これから世界で活躍する学生たちには世界の建築技術や歴史にも目を向けて欲しいと思います。